焼き鯖すし「若廣」
今回、焼き鯖すし発祥の店として知られる若廣を訪問し、製造現場や商品づくりへのこだわり、企業の取り組みについて話を伺った。

若廣の主力商品である焼き鯖すしは、現在では羽田空港を中心に全国へ出荷され、多くの人に親しまれている。工場では平日約2,000食、週末にはその倍以上を製造し、365日体制で稼働している。さらに、多い日には1万本もの焼き鯖すしを製造していると聞き、その生産規模の大きさに驚かされた。
しかし、全国的な知名度を得るまでには地道な取り組みもあった。当初は地元・小浜市での認知度がそれほど高くなかったことから、地域に根付く活動として3月8日の「鯖の日」に学校給食で鯖寿司を提供している。また、工場見学も積極的に受け入れ、子どもたちに地元の食文化を伝える活動を続けている。
現在は「小浜といえば焼き鯖すし、福井といえば焼き鯖すしと思っていただけるように、これからも頑張っていきたい」という思いのもと、地域の魅力発信にも力を入れている。
素材へのこだわり
若廣では、使用する素材一つひとつに強いこだわりを持っている。
焼き鯖すしに使用している鯖は、主に良質な脂が乗ったノルウェー産を使用しており、現地の巻き網漁でとれた鮮度の良い鯖を厳選し、買い付けの際には品質の検査も行う。こうして選び抜かれた鯖を確保し、小浜へ運んでいる。

また、鯖の骨は一本一本ピンセットで丁寧に取り除いている。骨の部分を包丁で切り取る方法もあるが、それでは身が薄くなり、鯖本来の食べ応えが損なわれてしまう。そのため手間を惜しまず、手作業で骨を抜くことで肉厚のサバフィレが作られる。

酢飯には福井県産コシヒカリを使用している。ランクは特A米で、一般的には寿司飯には向かないとされる品種だが、「食べておいしい米を使いたい」という考えから独自技術によって寿司に適した状態へ仕上げている。
また酢も無添加で焼き鯖すしの為に作ったオリジナルの酢を使用している。

さらにシャリと鯖の間に入っているガリにも工夫がある。一般的な製法とは異なりお湯を通さず加工することで、生姜本来のシャキシャキとした食感を残している。
職人の技が光る製造工程
若廣の焼き鯖すしは、現在も手巻きにこだわって製造されている。
まず酢飯の上に大葉を端まで均等に敷き、その上に鯖を配置し、均一の長さに巻き上げる。
商品を載せる板とのバランスや見た目の美しさにも配慮されており、切り分けた際にも均一に仕上がるよう工夫されている。

特に難しいのが巻きの工程である。鯖は尻尾側が細くなりやすいため、全体を均等な太さに整える技術が求められる。機械では魚ごとの個体差に対応できないため、若廣では手巻きを続けている。
工場長は「巻き加減によって味が全く違うため、鯖、大葉、ガリの一体感を大切にしている。機械ではできない人の手仕事だからこそ思いとたましいが入る」と話していた。


徹底した品質管理
大量生産を行いながらも、品質管理は非常に徹底されている。
焼き上げた鯖の選別は限られた担当者が行っている。あえて技術を広く教えず、少人数で経験を積むことで選別精度を高めているという。
製造工程では鯖の長さや巻き具合の抜き打ち検査を実施。さらに包装前には魚の表面に異物がないかを目視で確認し、再度包装する工程も設けられている。
最終的には焦げや塩分にも反応する金属探知機による検査を行う。検査機器が正常に作動しているかを確認するため、あえて金属を通して機械の状態も点検している。検査データは記録され、後から確認できる仕組みとなっている。

安全を支える衛生管理
工場内では異物混入防止のための衛生管理も徹底されている。
作業前には全身に粘着ローラーをかけ、30秒間の手洗いを2回実施する。時間を計測しながら肘まで丁寧に洗浄した後、アルコール消毒を行う。作業中も1時間に1度粘着ローラーをかけ、衛生環境を維持している。
すべてはお客様のために
取材の最後に印象的だったのは、「味を守り続けるため、1本でもミスなく、お客様に満足していただける商品を提供したい」という言葉だった。
若廣では、手間をかけるべき部分にはしっかり時間をかける一方で、ヒューマンエラーを防ぐための効率化にも取り組んでいる。無理な働き方は結果的にミスにつながるため、「苦労をするな、工夫をしろ」という考え方を大切にしているという。
生産性向上も品質向上も、すべてはお客様のため。その思いは、味に妥協しない姿勢として、製造現場の随所に表れていた。
今回の取材を通じて、若廣の焼き鯖すしは単なる名物商品ではなく、素材へのこだわり、職人の技術、徹底した品質管理、そして地域への思いによって支えられていることを知った。小浜・福井の味を全国へ届けようとする挑戦は、これからも続いていく。
