ヒゲ農園さんの甘〜いさつまいもの秘密

ヒゲ農園さん
代表 : 関 賢一郎さん
主な作物:さつまいも (とみつ金時、糖蜜芋、紅はるか、紫芋、シルクスイート)
スイートコーン 他
耕作面積:約3.5ヘクタール
さつまいもの年間生産量:約700トン
元々は10年間、石焼き芋屋「ヒゲ商店」を営んでいた関さん。
本格的に農業を始めるために、福井県が主催する「ふくい園芸カレッジ」で2年間学びました。
その後、 「ヒゲ農園」として農家を始めて現在4年目。
富津地区では、代々農家を継ぐ方が中心でしたが
ヒゲ農園さんは外部から来た唯一の農家として運営されています。

ヒゲ農園のこだわりは、キュアリング
美味しい芋を育てるために欠かせないのが、「キュアリング」と呼ばれる工程です。
ヒゲ農園では、近隣の農家と連携し、キュアリングを行うための専用貯蔵庫を10ヶ所備えています。
まず、収穫した芋は土が付いたままの状態で低温貯蔵庫へと運ばれます。
庫内の温度は13℃に保たれており、ここで芋をしばらく置きます。


常温のまま保存すると、芋はすぐに芽が出たり、乾燥してパサパサになったりと、劣化が進んでしまいます。
しかし、この低温貯蔵庫でしっかりと休眠させることで、芋は生きたまま、鮮度を保った状態で保存されます。



13°Cの貯蔵庫がいっぱいになると、貯蔵庫の温度と湿度を調整し、
温度30°C・湿度90%という高温多湿の環境に調整します。
ここでさらにキュアリングを進めていきます。
温度と湿度の高い、芋にとって過酷な環境に置くことで、
芋の中では「デンプンの糖化」や、 「コルク化」と呼ばれる変化が起こります。
【糖化】: デンプンが、甘みのもとである糖へと変化すること
【コルク化】: 芋の皮と実の間にコルク状の層が出来て、水分や栄養が外に逃げにくくなること
これにより、芋はしっとりとした食感になり、
甘みが増すだけでなく、日持ちも良くなります。
キュアリングをしていない芋と比べると、味の差は歴然です。
この工程は3~4日間かけて行われ、
その後、芋は再び12.5°Cの低温環境で、約2ヶ月間保存されます。
ここまでの工程を「キュアリング」といいます。
さつまいもの味方はそば
ヒゲ農園さんでは、さつまいもの隣の畑でそばも育てています。
さつまいもを同じ畑で何年も続けて育てると、
土の中の菌のバランスが偏りやすくなり、病気が出やすくなることがあります。
そのためヒゲ農園では、3年を目安に、そばに切り替えながら畑を管理しています。
そばは強い作物で、雑草を抑える効果があり、
次にさつまいもを育てるときに作業がしやすくなります。

設備の充実と手作業へのこだわり
お話を伺っていて感じたのは、機械の設備がとても充実していることです。
一方で、生育に大切な工程には、手作業も大事にされている点も印象的でした。
畑にはスプリンクラーが設置され、水やりの設備がしっかり整っています。
水源は、九頭竜川から引いた水が使われています。
葉をカットしたり、芋の上にかぶせたシートの回収、 土を起こして芋を掘り出す作業などは機械で。
広い畑を効率的に管理しています。

芋を植える際は、手作業で。
「船底植え」と呼ばれる植え方をしています。
船底植えは芋の形がきれいに整い、実のつき方も理想的になるそうです。

↑この道具を使ってひとつずつ苗を植えます。
さらに、苗を植えるときの「節管理」も重要なポイント。
苗の節から芋ができるため、節の数のバランスが良い苗を選んで植えています。
この節管理によって、芋の大きさや数をコントロールしやすくなります。


最終的に商品となる加工についても、手作業と機械の工程を使い分けています。
収穫とキュアリングを終えたさつまいもは、
さつまいもチップス、焼き芋ペースト、冷凍焼き芋などに加工されます。
中でもさつまいもチップスは、なんと全て手作り。
お二人で作業していると聞いて驚きました。
ペースト加工には裏ごし専用の機械を、
冷凍焼き芋には急速冷凍の機械を使っています。
こうした機械を使っている農家さんはほとんどいないそうです。

さつまいもの美味しい食べ方
関さんおすすめの食べ方は、『さつまいもの天ぷら』
実際にヒゲ農園のさつまいもの消費方法として断トツで多いのがさつまいもの天ぷらで、
焼き芋に並ぶほど美味しい食べ方とのことです。
味付けは塩のみでシンプルに。ぜひ試してみてください!
最後に
ヒゲ農園さんの取材をさせていただいて一番強く感じたことは
美味しい商品を作るための情熱です。
商品が出来るまでの工程ひとつひとつの説明を受け、
とてもこだわりを持って作られていることが分かりました。
ヒゲ農園さんの商品には、オリジナルのロゴが入ったシールが必ず貼られています。
「確実に美味しい印」という意味があると教えていただきました。
品質への自信と、商品に込められた熱い想いが伝わりました。
